暗号資産(仮想通貨)は原則として雑所得に分類?税金の計算方法と確定申告が必要な場合を把握しよう!
近年、ビットコインをはじめとする暗号資産(仮想通貨)の売買をする方が増加しました。しかし、「売買によって得た所得の区分」や「利益が発生するタイミング」「利益の計算方法」に関しては、あまり意識していない方がいるかもしれません。
そこで、本記事では、暗号資産の売買による所得が雑所得に区分されることや、どのようなタイミングで利益が発生するのかをご紹介します。利益の計算方法も解説するので、暗号資産の売買をしている方や、これからトレードをはじめようと考えている方は、ぜひ参考にしてください。
暗号資産(仮想通貨)トレードの利益は、原則として「雑所得」に区分される
暗号資産の売買によって得た所得は、原則として「雑所得」に区分されることを把握しておきましょう。
雑所得には、給与所得や事業所得とは異なり、「給与所得控除」「青色申告特別控除」のような控除の仕組みがありません。その分、給与所得や事業所得に比べて所得税を算出する課税所得金額が大きくなり、税金が多く課されることになります。
雑所得とは?
個人の所得は、以下に示すように、10種類の区分があります。
1. 利子所得:預貯金や公社債の利子などによる所得
2. 配当所得:株主や出資者が法人から受ける配当などによる所得
3. 不動産所得:不動産(土地・建物)などの貸し付けによる所得
4. 事業所得:事業によって得た所得
5. 給与所得:勤務先から支払われる給料・賞与などによる所得
6. 退職所得:退職時に勤務先から受ける退職手当などによる所得
7. 山林所得:取得から5年を超過した山林を伐採、または、立木のまま譲渡して得た所得
8. 譲渡所得:土地・建物・ゴルフ会員権など資産の譲渡で得た所得
9. 一時所得:懸賞金や競馬の馬券の払戻金、保険の満期金などによる臨時的・偶発的な所得
10. 雑所得:上記の1~9に該当しない所得
なお、暗号資産による所得のほか、アフィリエイトや原稿料などによる所得も、原則として雑所得に区分されます。
「事業」として売買を行っている場合は、事業所得に区分される
「雑所得」としてみなされるのは、あくまでも原則です。「事業」として暗号資産の売買を行っている場合は、「事業所得」に区分されます。ただし、以下に示すような条件を満たさなければ、事業所得として認められないので注意しましょう。
- 暗号資産の売買で生計を立てている
- 事業用の資産として暗号資産を保有している
なお、2022年12月に国税庁が暗号資産の所得区分に関する新たな方針を示し、原則として「雑所得」に区分されるものの、暗号資産の収入金額が300万円を超え帳簿書類の保存がある場合は「事業所得」とみなされることになりました。「事業所得に該当するのだろうか」と不安な場合は、税務署や税理士にご相談ください。
株式や債券などと異なり、暗号資産による所得は総合課税となる
所得税を計算する際には、以下の2種類の方式が用いられます。
- 総合課税:ほかの所得(給与所得、事業所得など)と合算したうえで税額を計算する方式(所得金額が大きくなるほど、税率が上がる「累進課税」)
- 分離課税:ほかの所得と切り離して、単独で税額を計算する方式
株式や債券、ETF、REITなどを売買して得た利益は分離課税となり、税率が「20.315%」に固定されていますが、暗号資産を売買して得た利益は総合課税となります。
なお、総合課税の場合は、以下に示す「所得税の速算表」を利用すると迅速な税額計算が可能です。
課税される所得金額(所得から所得控除を差し引いた後の金額) | 税率 | 控除額 |
1,000円から1,949,000円まで | 5% | 0円 |
1,950,000円から3,299,000円まで | 10% | 97,500円 |
3,300,000円から6,949,000円まで | 20% | 427,500円 |
6,950,000円から8,999,000円まで | 23% | 636,000円 |
9,000,000円から17,999,000円まで | 33% | 1,536,000円 |
18,000,000円から39,999,000円まで | 40% | 2,796,000円 |
40,000,000円以上 | 45% | 4,796,000円 |
例えば、各種控除を差し引いた後の金額(課税される所得金額)が「320万円」の場合、3,200,000円×0.1(税率10%)=320,000円なので、そこから控除額の97,500円を差し引くと「222,500円」が所得税額となります。
利益が発生するタイミング
暗号資産による利益は、以下に示すタイミングで発生することを覚えておきましょう。
- 保有している銘柄を売却した場合
- 暗号資産を用いてショッピングをした場合
- 別の銘柄と交換した場合
- マイニングやステーキングなどを実施した場合
それぞれについて詳しく説明します。
保有している銘柄を売却した場合
購入時点よりも高い価格で暗号資産を売却すると、「利益が発生した」とみなされます。以下は、その具体例です。
- 2月10日:ビットコインを10万円分購入
- 4月15日:保有しているビットコインを全部売却し、13万円を獲得
この場合は、13万円-10万円=3万円が利益です。なお、売却時の価格が購入時の価格よりも下がっている場合は、利益ではなく損失となります。
暗号資産を用いてショッピングをした場合
店舗によっては暗号資産(ビットコインなど)を使用して買い物が可能なケースがあります。暗号資産を購入した時点の価格よりも、ショッピングで使用した時点の価格のほうが高くなっている場合、差額が利益とみなされることを覚えておきましょう。以下に、具体例を示します。
- 9月10日:「1BTC=350万円」のレートで0.1BTC(35万円相当)を購入
- 11月25日:レートが「1BTC=400万円」となっているタイミングで、0.1BTC(40万円相当)を使って家電製品などを購入
この場合、40万円-35万円=5万円が利益となります。
別の銘柄と交換した場合
別の銘柄に交換した場合も、最初に暗号資産を購入した際の価格よりも交換時の価格のほうが高くなっていれば、利益が発生することになります。具体例を以下に示すので、ぜひ参考にしてください。
- 8月20日:レートが「1BTC=350万円」となっているタイミングで、日本円で0.1BTC分(35万円相当)のビットコインを購入
- 12月10日:レートが「1BTC=400万円」となっているタイミングで、保有しているビットコイン0.1BTC(40万円相当)を全部イーサリアムに交換
この場合、イーサリアムに交換した際の価値である40万円から、ビットコインを購入した際の価値である35万円を差し引いた「5万円」が利益 となります。
マイニングやステーキングなどを実施した場合
暗号資産による利益は、マイニングやステーキング、レンディングなど、売買以外のタイミングでも発生することを覚えておきましょう。この場合、取得時点における価値(時価)で利益を考えることになります。
なお、ハードフォークによってブロックチェーンが分岐し、新しい銘柄を取得した場合は、その時点での価格が「0円」なので利益が発生したとはみなされません 。
暗号資産の利益の計算方法
暗号資産のトレードでは、何十回、何百回も売買を繰り返すことになるかもしれません。そのような場合、獲得した利益(所得)は、以下の2種類の方法のいずれかで計算することが可能です。なお、1度選択した計算方法は、原則として3年間は変更が認められず、翌年以降も使い続けなければなりません。
- 移動平均法
- 総平均法
それぞれについて詳しく説明します。
移動平均法
移動平均法とは、暗号資産を購入するたびに、毎回、平均単価を計算して取得原価とする方法です。取得のたびに計算しなければならないため、かなりの労力が必要になります。
手計算ではミスが発生しやすいので、ツールを使って計算するほうが良いでしょう。
総平均法
総平均法とは、年間購入金額を平均して取得原価とする方法です。価格変動が大きくなると実際の取得金額との間に乖離が発生してしまいますが、取引件数が多い場合は計算が簡略化されます。
暗号資産による所得は、原則として「雑所得」に分類され、総合課税です。暗号資産の取引で損失が発生しても、雑所得として他にも利益があれば、原則として雑所得内で損益通算が可能です。また、上記2つの計算方法のどちらを選択するかによっても、税金面で得になるケースは変わります。税額に一定の差が生じる場合もあるので、税理士に相談したうえで、ご自身に適した方法を選びましょう。
なお、特に届出をしなければ、所得税には「総平均法」、法人税には「移動平均法」が自動的に適用されます。
確定申告をしなければならないケース
以下に、所得税の確定申告において、暗号資産による所得を雑所得欄に記載しなければならないケースを示します(1・2・3のいずれも「暗号資産以外には副業収入がないケース」を、1は「1ヶ所から給与の支払いを受けているケース」を想定)。
1. 年収2,000万円以下の給与所得者で、暗号資産で20万円を超える所得を得た場合
2. 年収2,000万円を超える給与所得者で、暗号資産による所得を得た場合
3. 事業所得者で、副業として暗号資産による所得を得た場合
なお、1に関してですが、「暗号資産以外による雑所得(アフィリエイトなどによる所得)」がある場合、それらとの合計額が20万円を超えているのであれば、確定申告が必要になります。詳細は、国税庁公式サイトでご確認ください。不明な点がある場合は、税務署や税理士などに相談しましょう。
確定申告の義務を怠った場合に被るペナルティ
確定申告の義務を怠ると、税務調査や追徴課税を受ける可能性があるのでご注意ください。以下は、納めるべき税金があるにもかかわらず、期日までに確定申告・納税をしなかった場合に課される「加算税」の種類です。
• 過少申告加算税:期限内に提出した申告書に記載された金額が少なかった場合に、10%または15%の税率で課される。
• 無申告加算税:正当な理由なく期限内に申告しなかった場合に、納付すべき税額に対して15%または20%の税率で課される。
• 重加算税:「過少申告加算税または無申告加算税が課される場合」に該当し、かつ、「税額などの計算の基礎となる事実の全部または一部を隠蔽・仮装した場合」に課される(過少申告に関しては追加本税の35%、無申告に関しては納付税額の40%の税率で課される) 。
なお、「悪質」と認定されると、国税庁から検察庁に対して「刑事告発」が行われるケースもあります。2020年には、暗号資産に関する事案では全国初の告発となった事例で、有罪判決が下されました。確定申告および納税は国民の義務なので、税法に基づいて適切に対応しましょう。
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