暗号資産(仮想通貨)の税制について徹底解説!いつから分離課税が開始される?
2026年5月下旬時点においては、暗号資産(仮想通貨)の取引で得た所得には「総合課税」が、FXなどの取引で得た所得に対しては「分離課税」が適用されます。
以前はFXの所得に対しても総合課税が適用されていましたが、税制改正で分離課税に変更されたという経緯があるため、「いつから暗号資産の所得にも分離課税が適用されるようになるのか知りたい」という方もいるのではないでしょうか。
結論を述べると、2025年12月26日に閣議決定された「令和8年度税制改正の大綱」に分離課税を導入する方針が盛り込まれているため、具体的な時期は未定ですが、近い将来、暗号資産の所得に分離課税が適用される可能性があります。
本記事では、現時点の暗号資産税制について解説したうえで、過去の業界団体・行政機関による税制改正の働きかけや、海外(主要国)の暗号資産税制、2025年12月に閣議決定された「令和8年度税制改正大綱」をご紹介し、いつから暗号資産の所得に対して分離課税が適用されるようになるのかを考察します。
現時点では暗号資産(仮想通貨)の所得には「総合課税」が適用される
2026年5月21日時点では、暗号資産の所得は基本的に「雑所得」に分類され、「総合課税」が適用されます。総合課税とは、個人が得た所得(給与所得、雑所得など)を合計した金額に対して、所得額に応じた税率をかけて所得税額を算出する課税方法です。
なお、総合課税では、課税所得が多くなるほど税率が高くなる「累進課税方式」が採用されています。暗号資産取引で多額の所得を得たら、高額の税金が発生することを認識しておきましょう。
株式やFXなどの所得には「分離課税」が適用
投資家のなかには、暗号資産取引だけではなく、株式の売買やFX、商品先物取引なども行っている方がいるかもしれません。
暗号資産取引で得た所得とは異なり、株式の売買やFX、商品先物取引などで得た所得には「分離課税」が適用されます。分離課税とは、ほかの所得と合算させずに、特定の所得のみを分離し、その金額に一定の税率をかけて所得税額を算出する課税方式です。
なお、ご自身で確定申告・納税を行う「申告分離課税」と、証券会社などが源泉徴収を行う「源泉分離課税」の2種類があります。
【関連記事】暗号資産(仮想通貨)は原則として雑所得に分類?税金の計算方法と確定申告が必要な場合を把握しよう!
暗号資産の所得は、いつから分離課税が適用される?
暗号資産の値動きは激しいため、売買したタイミングによっては(急落して底値になったタイミングで購入し、高騰して天井になったタイミングで売却した場合)、多額の所得を得る可能性があります。
上述したように、現時点では暗号資産の所得に対しては総合課税が適用され、所得額が大きくなるほど税金の負担も重くなっていくため、「株式の売買やFXなどのように、一定税率の分離課税になってほしい」という方もいるのではないでしょうか。
いつから分離課税が適用されるのかを正確に予想することは困難です。
FXの場合、過去の税制改正で総合課税から分離課税に変更された
以前は、FXで得た所得に対して原則として総合課税が適用されていましたが、2012年に税制改正が行われ、全面的に分離課税に変更されました(「くりっく365」「大証FX」に関しては、2011年以前から分離課税が適用)。
なお、2012年の税制改正以降、FXの取引高が大幅に増加し、2018年には日本のFX取引高のシェアが世界の46%を占める状況になりました。そのため、暗号資産に関しても、分離課税の導入によって取引が活性化することが期待されます。
業界団体・行政機関による税制改正の要望・働きかけ
一般社団法人日本暗号資産ビジネス協会および一般社団法人日本暗号資産等取引業協会は2025年7月30日に、「2026年度税制改正に関する要望書」を政府に提出し、暗号資産で得た所得に対する課税方式を分離課税(所得税および住民税の合計で一律20%の税率)に変更するように働きかけています。
また、金融庁も「令和8年度税制改正要望事項」において、暗号資産取引で得た所得に関して、以下のように要望しました。
| 暗号資産取引を他の多くの金融商品と同様の分離課税とすることで、暗号資産を含めた多様な金融商品に投資しやすい環境を整備し、国民の安定的な資産形成を支援する。 |
これらの要望・働きかけを受け、2025年12月26日に閣議決定された「令和8年度税制改正の大綱」に分離課税を導入する方針が盛り込まれました(詳細は後述)。
分離課税に移行した場合のシミュレーション
暗号資産で得た所得に関して「一律15%」の税率(所得税のみを考慮)がかかる分離課税に移行した場合に、どのくらいの税金がかかるのか(現行の総合課税の税制に比べて、どのくらい税金の負担が減るのか)をシミュレーションします。
下表に、「給与所得(各種所得控除額差引後の課税所得額)が100万円・300万円・500万円・800万円の会社員が暗号資産の売買で100万円の所得を得たケース」について試算した結果をまとめました。総合課税の対象とされる給与所得に関しては、国税庁公式Webサイトの「No.2260 所得税の税率」に掲載されている「所得税の速算表」を使用して所得税額を算出できます。
| 給与所得(各種所得控除額差引後の課税所得額) | 100万円 | 300万円 | 500万円 | 800万円 |
| 暗号資産で得た所得の課税方式が総合課税の場合 | 所得税額:200万円×0.1-97,500円=102,500円 | 所得税額:400万円×0.2-427,500円=372,500円 | 所得税額:600万円×0.2-427,500円=772,500円 | 所得税額:900万円×0.33-1,536,000円=1,434,000円 |
| 暗号資産で得た所得の課税方式が分離課税の場合 | 給与所得に課される所得税:100万円×0.05=50,000円
暗号資産の所得に課される所得税:100万円×0.15=150,000円
合計:200,000円 | 給与所得に課される所得税:300万円×0.1-97,500円=202,500円
暗号資産の所得に課される所得税:100万円×0.15=150,000円
合計:352,500円 | 給与所得に課される所得税:500万円×0.2-427,500円=572,500円
暗号資産の所得に課される所得税:100万円×0.15=150,000円
合計:722,500円 | 給与所得に課される所得税:800万円×0.23-636,000円=1,204,000円
暗号資産の所得に課される所得税:100万円×0.15=150,000円
合計:1,354,000円 |
なお、上表の内容は、所得税のみを考慮してシミュレーションを実施した数値です。実際には、所得税のほかに、復興特別所得税や住民税もかかります。また、税額控除(住宅ローン控除など)に関しては考慮していないため、あくまでも「おおよその目安」として参考にしてください。
所得によって、分離課税のほうが有利な場合(トータルの税金が少ないケース)もあれば、総合課税のほうが有利な場合もあるでしょう。税制が改正されて分離課税が導入されると、高額納税者の負担は軽減されますが、所得が低い場合は恩恵を受けられるとは限りません。税額をシミュレーションしたうえで、ご自身にとって有利な課税方式を選択することが重要です。
海外の暗号資産税制
税制は、国によって異なります。以下、主要国の暗号資産に関する税制をご紹介するので、ぜひ参考にしてください。なお、2026年6月下旬時点における情報であり、今後、税制が変更される可能性があります。最新情報は、各国の税務当局の公式Webサイトなどでご確認ください。
- アメリカ:1年以上保有している暗号資産には、長期キャピタルゲイン税率(所得に応じて0%・15%・20%のいずれか)が適用(保有期間が1年未満の暗号資産に関しては、通常の所得として累進税率で課税)
- ドイツ:年間利益が1,000ユーロ未満の場合や、1年以上保有している暗号資産の売却・交換については非課税
- イギリス:所得状況に応じて18%または24%の固定税率
- フランス:31.4%(社会保障費拠出を含む)の固定税率と累進税率を選択可能で、売却総額が305ユーロ以下の場合は非課税
このように、海外では暗号資産の取引で得た所得に関して、「分離課税」や「非課税」とされているケースもあります。「日本の暗号資産税制が分離課税に改正されるまで待てない」という方は、海外に移住することも選択肢のひとつです。
ただし、言語や文化、食生活などの違いがあるため、現地の生活に適応できるとは限りません。海外移住に不安を感じる場合は、日本国内で制度改正を待つほうが良いでしょう。
「令和8年度税制改正の大綱」で分離課税を導入する方針が示された
2025年12月26日に閣議決定された「令和8年度税制改正の大綱」において、金融商品取引法などの改正を前提に、以下の措置を講じる方針が示されました。
| 居住者等が、暗号資産取引業(仮称)を行う者に対して暗号資産(金融商品取引業者登録簿に登録されている暗号資産等に限る。以下「特定暗号資産」という。)の譲渡等をした場合には、その譲渡等による譲渡所得等については、他の所得と分離して20%(所得税15%、個人住民税5%)の税率により課税する。 |
また、以下に示すように、3年間の繰越控除を可能にすることも盛り込まれています。
| 特定暗号資産を暗号資産取引業を行う者に対して譲渡等をしたことにより生じた損失の金額のうちに、その譲渡等をした日の属する年分の特定暗号資産に係る譲渡所得等の金額の計算上控除してもなお控除しきれない金額があるときは、一定の要件の下で、その控除しきれない金額についてその年の翌年以後3年内の各年分の特定暗号資産に係る譲渡所得等の金額からの繰越控除を可能とする。 |
2026年5月下旬時点では、まだ制度設計の詳細が公表されていませんが、上記方針を踏まえて関係法令の改正作業が進められる見込みです。
なお、「金融商品取引法改正法施行日の属する年の翌年1月1日以後に行う特定暗号資産の譲渡」から適用する方針が大綱に記載されています。2026年4月10日に国会に「金融商品取引法及び資金決済に関する法律の一部を改正する法律案」が提出されましたが、5月24日時点では審議中で、まだ可決されていません。
このような状況を踏まえ、さまざまな税理士や公認会計士が「改正法が2027年に施行され、2028年1月以降の取引分から分離課税の適用が開始される」と予想しています。国会での審議状況や金融庁公式Webサイトなどをこまめにチェックし、動向の把握に努めましょう。
暗号資産デリバティブ(暗号資産FX)取引にも分離課税が適用される見込み
金融庁が2025年12月に公表した「令和8(2026)年度税制改正について-税制改正大綱における金融庁関係の主要項目-」によると、暗号資産の現物取引だけではなく、暗号資産デリバティブ(暗号資産FX)取引に関しても分離課税が適用される見込みです。
また、2026年5月下旬時点の日本では暗号資産ETFの組成が禁止されていますが、政令改正によって組成可能とする方針も示されています。暗号資産ETFが組成され、日本の証券会社での取り扱いが開始されたら、これまで暗号資産に投資した経験がない投資家の参入が期待されます。
分離課税導入後の暗号資産税制を予想
現時点(2026年5月下旬時点)では、「令和8年度税制改正の大綱」で大まかな方針は示されているものの、具体的な制度設計が発表されていません。そこで、大綱で示された内容や、分離課税がすでに導入されている金融商品(株式・投資信託・ETFなど)に対する税制を踏まえて、暗号資産税制がどのように変わるのかを予想します。
税理士・公認会計士や業界関係者のなかには、以下のように予想・主張する者が見受けられます。
- 「分離課税の対象とされるのは、国内の取引所で新規に売買した暗号資産に限定される」
- 「海外の取引所やDEX(分散型取引所)で売買した暗号資産に関しては分離課税の対象外とされる」
- 「税制改正前から保有している暗号資産は対象外とされる」
- 「条件を満たせば、DEXやDeFiで取引したケースも分離課税の対象とするべきである」
1および2に関しては、大綱において「暗号資産取引業(仮称)を行う者に対して暗号資産(金融商品取引業者登録簿に登録されている暗号資産等に限る。以下「特定暗号資産」という。)の譲渡等をした場合」とされていることを反映した見解です。
また、3は、大綱で「金融商品取引法改正法施行日の属する年の翌年1月1日以後に行う特定暗号資産の譲渡」から分離課税を適用する方針が示されていることと合致します。4に関しては、大綱からは明確に読み取れない要素であり、実現するかどうかは不透明ですが、今後の動向を注視しましょう。
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現状では、暗号資産による所得は「総合課税」となっています。しかし、今後、「令和8年度税制改正の大綱」で示された方針に基づき、「分離課税」に変更される予定なので、各種メディアの報道をこまめにチェックし、暗号資産税制の変更に対応できるように準備を進めましょう。
暗号資産で所得を得た場合、確定申告・納税のために、「損益計算」を行わなければなりません。手作業で実施することも可能ですが、計算ミスや転記ミスが発生しやすいので、ITツールで損益計算を自動化するほうが良いでしょう。
おすすめのITツールは、株式会社イー・ラーニング研究所の「クリプトマネージ」です。クリプトマネージの開発には、暗号資産の専門知識を有する税理士が携わっています。最新の税法に合わせて随時計算ロジックが自動改訂されるので、暗号資産の所得に対する課税方式が分離課税に移行しても安心です。なお、移動平均法と総平均法の両方に対応しており、損益・残高情報をグラフで表示させることもできます。
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