2024年度・2025年度税制改正について徹底解説!暗号資産(仮想通貨)に関する税金はどのように変わる?
暗号資産(仮想通貨)のトレードやマイニングなどをするのであれば、「税金」に関する情報も把握する必要があります。ただし、税制は、毎年のように何らかの変更点があるため、最新情報を把握するのに苦労している方もいるのではないでしょうか。
そこで、本記事では、暗号資産関連の税制改正について詳しく解説します。まず2023年度までの税制改正を振り返ったうえで、2024年度にどのように変わったのか、2025年にはどのように変わるのか、そして、2026年度税制改正に関する動きをご紹介するので、ぜひ参考にしてください。
暗号資産(仮想通貨)関連の税制改正の歴史
ここでは、2023年度までの暗号資産関連の税制が、どのように改正されてきたのかを大まかに振り返ります。
世界初の暗号資産であるビットコインが誕生してから、しばらくの間、日本政府は暗号資産の税制上の取り扱いに関して言及していませんでした。しかし、2014年に政府の答弁書のなかで「モノ」と言及され、「消費税の課税対象」であることが示されます。
ところが、2017年に施行された資金決済法では「支払手段」として位置付けられ、一転して暗号資産の売買は「消費税非課税」とされました。
その後、2019年度の税制改正では、「活発な市場が存在する暗号資産の評価方法」について、時価法を導入する措置が講じられます(法人税に関する措置)。
しかし、期末時価評価による含み益への課税を嫌って、スタートアップ企業が日本から流出する傾向が見られるようになりました。それを受け、2023年度の税制改正では、期末時価評価の対象となる暗号資産の範囲から「発行者が発行時から継続して保有する暗号資産」が除外されました。
2024年度税制改正で、暗号資産の税金はどのように変わった?
2024年度税制改正のなかで暗号資産の税金に影響を及ぼす要素は、以下の2点です。
- 第三者保有の暗号資産の期末時価評価課税からの除外
- 非居住者に係る暗号資産等取引情報の自動的交換のための報告制度の整備
それぞれについて詳しく説明します。
第三者保有の暗号資産の期末時価評価課税からの除外
まず、「第三者保有の暗号資産の期末時価評価課税からの除外」に関してですが、これによって影響を受けるのは「法人」です。
法人は、期末時点で保有している暗号資産の「時価」に基づいて課税されるため、その後に大幅に暗号資産の市場価格が値下がりした場合、納税するための資金を確保できなくなるケースがありました。
2023年度の税制改正においては、期末時価評価の対象となる暗号資産の範囲から「発行者が発行時から継続して保有する暗号資産」が除外されていました。しかし、上記の問題を解決するために、2024年度の税制改正により、条件を満たした場合には「第三者保有の暗号資産(他社発行の暗号資産)」を受け取った側も除外されるようになります。
今回の税制改正では「他者への移転を阻止する技術的措置が講じられている」などの条件があるため、更なる改正が望まれますが、以前よりも企業が暗号資産を保有しやすくなることから、今後、暗号資産関連のスタートアップ企業が増加するかもしれません。
なお、いつでも移転・売却可能な暗号資産(ビットコインやイーサリアムなど)は、従前通り、期末時価評価で税金が計算されることにご留意ください。
非居住者に係る暗号資産等取引情報の自動的交換のための報告制度の整備
次に、「非居住者に係る暗号資産等取引情報の自動的交換のための報告制度の整備」ですが、これによって影響を受けるのは「個人」です。
非居住者の「金融機関(銀行など)の口座」に関しては、2014年に策定された共通報告基準(CRS、Common Reporting Standard)に基づいて、OECD各国の税務当局の間で自動的に情報交換される仕組みが構築されています。
その後、「暗号資産の取引情報」に関しても、OECDにおいて情報の把握に関する議論が行われ、情報を報告する枠組み(CARF、Crypto-Asset Reporting Framework)が策定されました。
CARFの策定を受け、日本政府は、国内の暗号資産取引業者に対して「非居住者の暗号資産取引情報」の報告を義務付ける制度を整備する方針を示しています。
2025年度税制改正で、暗号資産の税金はどのように変わる?
個人が暗号資産で所得を得たケースに関しては、2025年度税制改正による変更点はありません。
ただし、中小企業経営強化税制における「特定経営力向上設備等」に関しては変更点があります。具体的には、改正前には「主要な事業」として実施するための暗号資産マイニング設備が対象に含まれていましたが、改正後には暗号資産マイニング設備が完全に対象から除外されました。
中小企業経営強化税制とは、中小企業等経営強化法の認定を受けた経営力向上計画に基づき、対象設備の取得や製作などを実施した場合に、即時償却または取得価額の10%の税額控除(資本金が3,000万円超の法人は7%)の適用を受けられる制度です。
なお、2025年度与党税制改正大綱においては、分離課税とされている株式などへの言及があり、「暗号資産税制の改正」が検討事項として盛り込まれています。
金融庁が「2026年度税制改正要望」で分離課税の導入を要望している
税制改正大綱は毎年12月に公表されるものであり、現時点(2025年11月下旬時点)ではどのような内容になるのかは確定していません。
ただし、2025年8月に金融庁は、「令和8(2026)年度税制改正要望について」において、「分離課税の導入」を要望事項として公表しました。要望事項の具体的な文言は、以下の通りです。
| 暗号資産取引に係る必要な法整備と併せて、分離課税の導入を含めた暗号資産取引等に係る課税の見直しを行うこと。 |
行政機関からの要望であるため、2026年度税制改正において暗号資産による所得が「分離課税」に移行することが期待されます。
暗号資産の業界団体が法改正を働きかけている
以前からJVCEA(一般社団法人日本暗号資産取引業協会)およびJCBA(一般社団法人日本暗号資産ビジネス協会)は、暗号資産に関する制度・法律の改正を政府に要望してきました。
直近では2025年7月30日に両団体が連名で「2026年度 税制改正に関する要望書」を政府に提出し、分離課税(および一律税率20%)への移行を要望しました。以下に、要望書に記載されている主な主張・要望事項を示します。
- 現行の暗号資産税制は、国民が暗号資産を利用したり売買したりすることを躊躇させる内容となっている
- 「暗号資産の売買は投機に過ぎない」という偏見を改めて、ほかの金融資産(株式など)と同等の取り扱いに移行することが必要
- 20%の申告分離課税を導入し、損失が出た場合は翌年以降3年間、暗号資産による所得金額からの繰越控除を可能とする
- 分離課税の範囲は、暗号資産の種類やウォレットの種類によって区分しない
- 現物取引およびデリバティブ取引の双方を分離課税の対象とする
2026年以降に要望が反映され、法改正が実現するかどうかを注視しましょう。
暗号資産で所得を得たら確定申告が必要
個人が暗号資産の売買などで所得を得たら、確定申告の「雑所得」の欄に記入したうえで所得税の納税が必要になる場合があるので注意しましょう。
以下は、個人に関して、確定申告の際に「暗号資産の所得」を申告しなければならない事例です(1および2は、「1ヶ所から給与を受け取っていて、給与の全部について源泉徴収されるケース」)。
- 年収2,000万円を超える給与所得者が、暗号資産による所得を得た場合
- 年収2,000万円以下の給与所得者が、暗号資産で年20万円を超える所得を得た場合
- 事業所得者が、副業として暗号資産による所得を得た場合
法人に関しては、所得税ではなく、法人税が課されます。詳細は、税理士や公認会計士、税務署などにご相談ください。
確定申告の義務を履行しなかった場合のペナルティ
確定申告をする義務があるにもかかわらず、適正に申告しなかった場合、以下に示すペナルティ(追徴課税)を受ける可能性があります。加算税は、本来納付する税金とは別に納付しなければなりません。
- 無申告加算税:正当な理由なく期限までに申告しなかった場合に、納付すべき税額に対して50万円以下の部分は15%、50万円超300万円以下の部分は20%、300万円超の部分は30%の税率で課される。
- 過少申告加算税:期限内に提出した申告書に記載された金額が実際よりも少なかった場合、納付すべき税金に対して50万円以下の部分は10%、50万円超の部分は15%の税率で課される。
- 重加算税:税額などの計算の基礎となる事実の全部または一部を隠蔽・仮装した場合に、無申告加算税に関しては納付税額に対して40%の税率で、過少申告加算税に関しては追加本税に対して35%の税率で課される。
上記の数値は、いずれも確定申告・納税していないまま税務調査を受けるまで放置していたケースのものです。税務署からの通知が届く前に自主的に期限後申告した場合は、無申告加算税の税率は5%に軽減され、過少申告加算税は課されません。
具体例として、「本来納める税額が330万円で、確定申告しないまま放置し続け、税務調査を受けた」というケースに関して、無申告加算税がどのくらい課されるのかをシミュレーションします。この場合、以下の1.から3.までの数値を足し合わせることによって、無申告加算税の金額を計算可能です。
- 本来納付する税額が50万円以下の部分:50万円×0.15=75,000円
- 本来納付する税額が50万円超300万円以下の部分:250万円×0.2=50万円
- 本来納付する税額が300万円超の部分:30万円×0.3=9万円
上記数値を合計すると、無申告加算税の金額は「665,000円」と算出されます。
また、期限後申告によって納める税金(本税)には、法定納期限の翌日から納付する日までの日数に応じて、利息に相当する延滞税も課されるため、なるべく早く申告・納税を実施しましょう。なお、延滞税は、本税に対してのみ課されるものであり、加算税に対しては課されません。
下表に、延滞税の割合をまとめました。
| 納期限までの期間、および、納期限の翌日から2ヶ月を経過する日まで | 年「7.3%」と「延滞税特例基準割合+1%」のいずれか低い割合 |
| 納期限の翌日から2ヶ月を経過した日以後 | 年「14.6%」と「延滞税特例基準割合+7.3%」のいずれか低い割合 |
延滞税特例基準割合とは、各年の前々年の9月から前年の8月までの各月における銀行の新規の短期貸出約定平均金利の合計を12で除して得た割合として各年の前年の11月30日までに財務大臣が告示する割合に、年1%の割合を加算した割合です。
具体的な数値は、国税庁公式サイトの「延滞税の割合」のページに掲載されています。2025年の場合、納期限までの期間、および、納期限の翌日から2ヶ月を経過する日までについては「2.4%」、納期限の翌日から2ヶ月を経過した日以後については「8.7%」とされています。
本来の税額よりも多い金額を納税しなければならない事態に陥らないように、日頃から取引に関する記録を作成したうえで、正しく損益を計算し、期日までに確定申告を行いましょう。
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