2024年度税制改正について徹底解説!暗号資産(仮想通貨)に関する税金はどのように変わる?
暗号資産(仮想通貨)のトレードやマイニングなどをするのであれば、「税金」に関する情報も把握する必要があります。ただし、税制は、毎年のように何らかの変更点があるため、最新情報を把握するのに苦労している方もいるのではないでしょうか。
そこで、本記事では、暗号資産関連の税制改正について詳しく解説します。まず過去の税制改正を振り返ったうえで、2024年度はどのように変わるのかをご紹介するので、ぜひ参考にしてください。
暗号資産(仮想通貨)関連の税制改正の歴史
ここでは、2023年度までの暗号資産関連の税制が、どのように改正されてきたのかを大まかに振り返ります。
世界初の暗号資産であるビットコインが誕生してから、しばらくの間、日本政府は暗号資産の税制上の取り扱いに関して言及していませんでした。しかし、2014年に政府の答弁書のなかで「モノ」と言及され、「消費税の課税対象」であることが示されます。
ところが、2017年に施行された資金決済法では「支払手段」として位置付けられ、一転して暗号資産の売買は「消費税非課税」とされました。
その後、2019年度の税制改正では、「活発な市場が存在する暗号資産の評価方法」について、時価法を導入する措置が講じられます(法人税に関する措置)。
しかし、期末時価評価による含み益への課税を嫌って、スタートアップ企業が日本から流出する傾向が見られるようになりました。それを受け、2023年度の税制改正では、期末時価評価の対象となる暗号資産の範囲から「発行者が発行時から継続して保有する暗号資産」が除外されました。
2024年度税制改正で、暗号資産の税金はどのように変わる?
2024年度税制改正のなかで暗号資産の税金に影響を及ぼす要素は、以下の2点です。
- 第三者保有の暗号資産の期末時価評価課税からの除外
- 非居住者に係る暗号資産等取引情報の自動的交換のための報告制度の整備
それぞれについて詳しく説明します。
第三者保有の暗号資産の期末時価評価課税からの除外
まず、「第三者保有の暗号資産の期末時価評価課税からの除外」に関してですが、これによって影響を受けるのは「法人」です。
法人は、期末時点で保有している暗号資産の「時価」に基づいて課税されるため、その後に大幅に暗号資産の市場価格が値下がりした場合、納税するための資金を確保できなくなるケースがありました。
2023年度の税制改正においては、期末時価評価の対象となる暗号資産の範囲から「発行者が発行時から継続して保有する暗号資産」が除外されていました。しかし、上記の問題を解決するために、2024年度の税制改正により、条件を満たした場合には「第三者保有の暗号資産(他社発行の暗号資産)」を受け取った側も除外されるようになります。
今回の税制改正では「他者への移転を阻止する技術的措置が講じられている」などの条件があるため、更なる改正が望まれますが、以前よりも企業が暗号資産を保有しやすくなることから、今後、暗号資産関連のスタートアップ企業が増加するかもしれません。
なお、いつでも移転・売却可能な暗号資産(ビットコインやイーサリアムなど)は、従前通り、期末時価評価で税金が計算されることにご留意ください。
非居住者に係る暗号資産等取引情報の自動的交換のための報告制度の整備
次に、「非居住者に係る暗号資産等取引情報の自動的交換のための報告制度の整備」ですが、これによって影響を受けるのは「個人」です。
非居住者の「金融機関(銀行など)の口座」に関しては、2014年に策定された共通報告基準(CRS、Common Reporting Standard)に基づいて、OECD各国の税務当局の間で自動的に情報交換される仕組みが構築されています。
その後、「暗号資産の取引情報」に関しても、OECDにおいて情報の把握に関する議論が行われ、情報を報告する枠組み(CARF、Crypto-Asset Reporting Framework)が策定されました。
CARFの策定を受け、日本政府は、国内の暗号資産取引業者に対して「非居住者の暗号資産取引情報」の報告を義務付ける制度を整備する方針を示しています。
暗号資産の業界団体が法改正を働きかけている
以前からJVCEA(一般社団法人日本暗号資産取引業協会)やJCBA(一般社団法人日本暗号資産ビジネス協会)といった業界団体は、暗号資産に関する制度・法律の改正を関係各所(金融庁など)に要望しています。しかし、2024年度税制改正では、以下に関する要望は反映されませんでした。
- 期末時価評価課税における短期売買目的以外の暗号資産の除外(法人税に関する措置)
- 所得課税における税率20%での分離課税
現在、暗号資産関連のビジネスを活性化するために、業界団体が各所に制度・法律の改正を働きかけ続けています。2025年以降に要望が反映され、法改正が実現するかどうかを注視しましょう。
暗号資産で所得を得たら確定申告が必要
個人が暗号資産の売買などで所得を得たら、確定申告の「雑所得」の欄に記入したうえで納税が必要になる場合があるので注意しましょう。
以下は、個人に関して、確定申告の際に「暗号資産の所得」を申告しなければならない事例です(1および2は、「1ヶ所から給与を受け取っていて、給与の全部について源泉徴収されるケース」)。
- 年収2,000万円を超える給与所得者が、暗号資産による所得を得た場合
- 年収2,000万円以下の給与所得者が、暗号資産で年20万円を超える所得を得た場合
- 事業所得者が、副業として暗号資産による所得を得た場合
法人に関しては、税理士や公認会計士、税務署などにご相談ください。
確定申告の義務を履行しなかった場合のペナルティ
確定申告をする義務があるにもかかわらず、適正に申告しなかった場合、以下に示すペナルティ(追徴課税)を受ける可能性があります。
- 無申告加算税:正当な理由なく期限までに申告しなかった場合に、納付すべき税額に対して15%または20%の税率で課される。
- 過少申告加算税:期限内に提出した申告書に記載された金額が実際よりも少なかった場合、納付すべき税金に対して10%または15%の税率で課される。
- 重加算税:税額などの計算の基礎となる事実の全部または一部を隠蔽・仮装した場合に、無申告加算税に関しては納付税額に対して40%の税率で、過少申告加算税に関しては追加本税に対して35%の税率で課される。
本来の税額よりも多い金額を納税しなければならない事態に陥らないように、日頃から取引に関する記録を作成したうえで、正しく損益を計算し、期日までに確定申告を行いましょう。
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